[2018.12.21]
第二部産学官の学
講演Ⅲ「2038年 南海トラフの巨大地震」
尾池 和夫様 地震学者 京都芸術大学 学長

1940年東京生まれ高知育ち。
1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て1988年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。
著書に、『新版活動期に入った地震列島』(岩波科学ライブラリー)、『日本列島の巨大地震』(岩波科学ライブラリー)、『俳景(四)ー洛中洛外・地球科学と俳句の風景』(マニュアルハウス)、『2038年 南海トラフの巨大地震』(マニュアルハウス)、『あっ!地球が・・・―漫画による宇宙の始まりから近未来の破局噴火まで―』(マニュアルハウス)、句集に『大地』(角川書店)、『瓢鮎図』(角川書店)などがある。
南海トラフは、巨大地震に向かって、地震活動期限の地震ピークを2038年12月にむかえます
1.過去に学ぶこと
20世紀最大の地震は1976年唐山地震でした。24万人の死者は出ましたが、地震予測もあり工場の補強、医薬品の準備をしていました。これがなければもっと被害が出ていのではないかと思います。中国の最近の若者は、過去の歴史を知らないので、私の本を中国語に訳して出版されました。こうやって学ぶことが大事です。
2.記憶の仕方
私は、筆記用具を持ち込めない手術室や福島の原発現場等では、俳句を詠んで頭に記憶するようにしています。
コイシの社長にも勧めましたが、皆さんもやってみてはいかがでしょうか。
3.地震記録からの世界貢献
日本は、古文書の津波記録からスーパーコンピュータで解析して、アメリカの西海岸でM9クラスの地震があったと推定しました。アメリカの歴史にこの情報を加えられたのは日本の最大の国際貢献だと思います。
4.防災について
地震が起きて座り込む状態は、震度が6だということがわかります。そして、揺れている時間を数えます。1秒で2kmの岩盤が割れます。
100秒で、200Kmの岩盤が割れたということがわかるので、津波がくると推定できるのです。そしたら、自発的に逃げることです。
逃げた後、安全な場所でメディアの情報を確認するというように、メディアの情報で動くのではなく、自分で見当をつけて逃げることが大事です。
普段から、小さな現象はよく起きているので、情報を大事にし、自分の住んでいる場所がどんな地盤か確認して、日常から対策をとることが大事だと考えます。
6.今後の地震予測
日本は、漢の時代、皇帝が間違った政治をしたら大地震が起こると言われていたのを、菅原道真が受け、この時代から地震を記録するようになりました。古文書から、活動期と静動期が100年毎にやってくると見えてきて1955年が活動期に入り、2038年がピークになります。これは、室戸岬の石積から推測しました。
南海トラフは過去に9回も地震の記録が残っているので、これを分析し、2038年12月がピークと予測しました。
地震は過去の記録から分析することで、地震予測がつき地震対策には有効と考え、私は、政府へ地震火山庁の設置と、地震火山予報士制度の擁立、地震予知実用化へ向けて進言しましたが、政府はこの文言を削除するよう求めてきましたので、擁立は難しいところです。
7.まとめ
まとめになりますが、私達は皆さんに、ジオパークに行っていただき、食べて学んで、珍しい大地の仕組みを学び俳句を詠んで欲しいと思います。
もし地球に意志があり、その地球が持続可能性を追求しているとします。地球は存在し続けようとするわけですから、人類が環境破壊など地球に迷惑を掛け続けると、人類を排除しようとし、人類にとって住めない環境に変化させようとするかもしれません。
つまり、人類滅亡後に高度な生き物が出現したとき、第四紀層から出てくる化石はごみ山のような化石ではなく、美しい化石を残そうという心掛けが良いのではないでしょうか。
***************************************************
私たちの住む地球の生い立ちを学び、今住む大地の歴史を学び、過去の記録を知ることから地震の活動を予測することができることを知りました。そして、いたずらに怖がるのではなく、対策、準備をすることが大事だと感じました。
尾池様、ありがとうございました。
京都造形芸術大学
| Trackback(0) | 講演・勉強会
[2018.12.17]
去る9月20日、弊社講演会「第2回九州未来土木in博多」を開催致しました。
あいにくの天候にもかかわらず、131名もの方にご来場いただき、
無事に講演会を終えることができました。
これもみなさま方のお力添えあってのことと、大変感謝いたしております。
コイシニュースでは少しずつ講演会の内容を紹介させて頂きます。
今回の講演会では、産学官の3部構成にて講演頂きました。
第一部 産学官の産/
第二部 産学官の学/
第三部 産学官の官/
まずは、第一部産学官の産
講演Ⅰ「赤色立体地図とは何か
平面が立体に見える表現が土木を変える」
千葉 達朗 様アジア航測(株) 先端技術研究所 千葉研究室 室長赤色立体図発案者

1956年宮城県石巻市生まれ。1975年日本大学文理学部応用地学科に入学。
地質学や地形学を学ぶ。日本大学大学院に進学、博士課程満了後、
母校の副手として5年半勤務。その後、アジア航測に入社、今日にいたる。
雲仙岳、有珠山、三宅島噴火の調査や、富士山などのハザードマップ作成の仕事に従事してきた。
2002年に富士山の青木ヶ原樹海の調査がきっかけで、赤色立体地図を発明。
国内外で多数の特許を取得、海外からの評価も高い。
この図は、一枚で立体的に見えることから、
ブラタモリなどのテレビ番組で使用されることも増え、
地理院地図というウェブサイトでも表示可能となった。
趣味は写真やARTで、プログラミングも、大学で授業を持つほど。
平成30年7月から日本火山学会副会長。
最近は、地形に加え都市のビルまで示した、クールマップを発明、特許出願中である。
赤色立体地図は、以前は内臓マップだとか気持ち悪いとかよく言われていました。
なぜ赤にしたのか等詳しくお話していきます。2002年に発明し、現在16年目です。
1. ことのはじめ 「青木ヶ原樹海が母 ~赤色立体地図 独創的な手法~」
青木ヶ原樹海は富士山の北西にあり、平安時代に活発な火山活動によりつくられましたが原始林が広がっていて調査が進みませんでした。
空中写真では樹木に遮られ、正確な地形図作成困難でした。
航空レーザー計測では、ほぼ真上から地面に向かってレーザーを打つので、
木の隙間を通って地面まで到達する割合が高く、
日本の様な木が多い地域では有効でした。
従来の空中写真測量では光が届かない箇所は計測できませんが、
航空レーザー計測をすると細かな地形も表現できました。
等高線図は見にくく、尾根か谷か分かりづらく樹海に入って調査するのは
難しく危険なので、等高線を使わない方法で地図を作成する事を決断しました。
2. 「既往手法の問題 ~陰影図では遭難する~」
「陰影図は方向が逆になると、尾根と谷が反転してしまう。
尾根と谷を間違えて、遭難してしまうかもしれない」
陰影図ではない他の方法はないか検討しました。
一番可能性が高かったのは斜度図(傾斜が急な所を黒くする画像)でした。
方向に依存せずよかったのですが、尾根と谷の区別がつきにくかったため、
尾根と谷の区別をつけて斜度図に味付けすればよいのではないかと考えました。
曇った日の光「環境光」を採用しました。(病院の手術灯の様なもの)
見落としがないように、尾根や独立峰は空が広いので明るく、谷や窪地は空が狭いので暗くしました。
3. 「赤色立体地図 ~必要は発明の母 富士山で生まれた~」
赤は様々な色の中で一番、彩度がとれる色です。
明度(明るさ)と彩度(色の鮮やかさ)を赤で表示させる事によって、
目の錯覚を利用し立体感を表現でき、凹凸のコントロールもできます。
新しい工法だと思いました。青木ヶ原樹海の調査に使用していた
等高線図に赤色立体地図を重ねると、
断層や河口、道路1本1本が詳しく見え遭難せずに調査できました。
4. 「応用事例 ~可視化の効果~」
○三宅島2000年噴火
火山ガスで植生被害 土砂災害発生、対策工事
2時期の航空レーザー計測による微地形の変化をGIS上で認識
砂防ダムができた、滝が後退した、道路がなくなった等、色んな事が読み取れる
○北海道サロベツ湿原
牧草地の微地形の可視化に成功
人間の目には分かりにくい微妙な凹凸も表現
○国土地理院数値地図50m
航空レーザー計測以外にも応用可能
○鳥瞰図にも 新しい地形認識手段
フルカラー画像は拡大/縮小に強い
○航空レーザー計測+ナローマルチビーム音響測深
写真に撮影できないデータを可視化(ダム湖等)
○ブラタモリ 鎌倉の赤色立体地図
国土地理院の5mメッシュ地形データを使用して作成
5. 「色相とは ~赤い色の理由~」
「赤・緑・青の3色が一番見やすく、その中で1番赤が人は見わけやすいです。」
3色使えない訳ではないので、ニセコのスキー場では青色立体地図を試みました。
6. 「脳内画像 ~様々なスケールのデータに適応可能」
溶岩表面の微地形[1/5000](1mメッシュ)~
プレート[世界地図](4000mメッシュ)まで表現が可能です。
○等高線による地形表現の終焉
・DEMデータの利用には、赤色立体地図が有効
・赤色立体地図は、1枚の地形図と重なる疑似カラー画像で、
特別な装置なしに、どの方向からも裸眼で立体的に見える
・等高線の苦手な人、老眼・色覚障碍者にもわかりやすい
*********************************************************
赤色立体地図は、千葉様がお話して下さった様に、誰にでも分かり易く、
様々なデータに利用可能だという事が分かりました。
弊社の測量資料にも活用していき、お客様に分かり安い資料作成を提供いていきたいです。
千葉様、ありがとうございました。
アジア航測㈱
| Trackback(0) | 講演・勉強会
[2018.08.29]
平素より、大変お世話になっております。
9.20 博多にて開催する
『第二回九州未来土木~人と自然とやりがいの共存を目指して~』の
申込み方法をご案内いたします。
※定員は約300名を予定しております。
早めのお申し込みを宜しくお願い致します。
9.20 九州未来土木 式次第
[Web]:申込みフォーム
[FAX]:申込用紙をプリントアウトのうえ下記番号にFAXお願い致します。
申込用紙
097-506-0500(大分)
[E-mail]:お名前等の各項目をご記載のうえ
koishi.news@koishi.co.jpまでお送り下さい。
【お名前】
【貴社名・団体名】
【役職】
【TEL】
【E-mail】
[電話]:下記番号にお電話ください。
097-506-0400(大分)
【各交通機関から会場までの経路】
| Trackback(0) | お知らせ
[2018.05.26]
64回目のコイシ塾は、京都造形芸術大学 学長 尾池 和夫様を
お迎えして国東市のアストくにさきマルチホールで開催致しました。
『土木と地球』というタイトルで弊社代表が講演をお願いしたところ
ご多忙の中、快く引き受けてくださいました。

始めに自己紹介として、先生が大事にしている
「天地人-三才の世界」<天文・地文・人文>を教えてくださり
文という字は人間を表すところからきているそうです。
学長を務められている京都造形芸術大学では
通信教育などもあり96歳で学士号を取得した方も...。
先生は俳句にも熱心に取り組んでおられ氷室俳句会を主宰されています。
俳句を詠む基本として『現在の現象を現場で詠む』<3現則>があり
先生も入院先や福島を訪問した際、その時にしか詠めない句を披露してくれました。
『現在の現象を現場で詠む』はどの世界にも通じる言葉であり
参加した従業員の多くが非常に感銘を受けました。

看板等の広告物のデザインについても、写真を交えながらお話してくれ
よくよくみると可笑しなものが世の中にあふれており
わかりやすく、誰がみても理解できるものと考えると
奥が深い世界だなぁと感じ、土木の世界も取り込んでいけたらと感じました。
先生の専門でもある地震についてもお話戴き
「2038年南海トラフの巨大地震」と先生の著書にあるように
地球の長い歴史から見ても、地震が起こらないところはないと
肝に念じ備えを怠らないようせねばと思います。
幅広い内容でしたが、各々に響くものがたくさんあったように感じます。
ご多忙の中、講演して戴いた尾池先生には感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
| Trackback(0) | コイシ塾レポート