9.20 第二回九州未来土木 in博多 講演レポート①
[2018.12.17]
去る9月20日、弊社講演会「第2回九州未来土木in博多」を開催致しました。
あいにくの天候にもかかわらず、131名もの方にご来場いただき、
無事に講演会を終えることができました。
これもみなさま方のお力添えあってのことと、大変感謝いたしております。
コイシニュースでは少しずつ講演会の内容を紹介させて頂きます。
今回の講演会では、産学官の3部構成にて講演頂きました。
第一部 産学官の産/
第二部 産学官の学/
第三部 産学官の官/
まずは、第一部産学官の産
講演Ⅰ「赤色立体地図とは何か
平面が立体に見える表現が土木を変える」
千葉 達朗 様アジア航測(株) 先端技術研究所 千葉研究室 室長赤色立体図発案者
1956年宮城県石巻市生まれ。1975年日本大学文理学部応用地学科に入学。
地質学や地形学を学ぶ。日本大学大学院に進学、博士課程満了後、
母校の副手として5年半勤務。その後、アジア航測に入社、今日にいたる。
雲仙岳、有珠山、三宅島噴火の調査や、富士山などのハザードマップ作成の仕事に従事してきた。
2002年に富士山の青木ヶ原樹海の調査がきっかけで、赤色立体地図を発明。
国内外で多数の特許を取得、海外からの評価も高い。
この図は、一枚で立体的に見えることから、
ブラタモリなどのテレビ番組で使用されることも増え、
地理院地図というウェブサイトでも表示可能となった。
趣味は写真やARTで、プログラミングも、大学で授業を持つほど。
平成30年7月から日本火山学会副会長。
最近は、地形に加え都市のビルまで示した、クールマップを発明、特許出願中である。
赤色立体地図は、以前は内臓マップだとか気持ち悪いとかよく言われていました。
なぜ赤にしたのか等詳しくお話していきます。2002年に発明し、現在16年目です。
1. ことのはじめ 「青木ヶ原樹海が母 ~赤色立体地図 独創的な手法~」
青木ヶ原樹海は富士山の北西にあり、平安時代に活発な火山活動によりつくられましたが原始林が広がっていて調査が進みませんでした。
空中写真では樹木に遮られ、正確な地形図作成困難でした。
航空レーザー計測では、ほぼ真上から地面に向かってレーザーを打つので、
木の隙間を通って地面まで到達する割合が高く、
日本の様な木が多い地域では有効でした。
従来の空中写真測量では光が届かない箇所は計測できませんが、
航空レーザー計測をすると細かな地形も表現できました。
等高線図は見にくく、尾根か谷か分かりづらく樹海に入って調査するのは
難しく危険なので、等高線を使わない方法で地図を作成する事を決断しました。
2. 「既往手法の問題 ~陰影図では遭難する~」
「陰影図は方向が逆になると、尾根と谷が反転してしまう。
尾根と谷を間違えて、遭難してしまうかもしれない」
陰影図ではない他の方法はないか検討しました。
一番可能性が高かったのは斜度図(傾斜が急な所を黒くする画像)でした。
方向に依存せずよかったのですが、尾根と谷の区別がつきにくかったため、
尾根と谷の区別をつけて斜度図に味付けすればよいのではないかと考えました。
曇った日の光「環境光」を採用しました。(病院の手術灯の様なもの)
見落としがないように、尾根や独立峰は空が広いので明るく、谷や窪地は空が狭いので暗くしました。
3. 「赤色立体地図 ~必要は発明の母 富士山で生まれた~」
赤は様々な色の中で一番、彩度がとれる色です。
明度(明るさ)と彩度(色の鮮やかさ)を赤で表示させる事によって、
目の錯覚を利用し立体感を表現でき、凹凸のコントロールもできます。
新しい工法だと思いました。青木ヶ原樹海の調査に使用していた
等高線図に赤色立体地図を重ねると、
断層や河口、道路1本1本が詳しく見え遭難せずに調査できました。
4. 「応用事例 ~可視化の効果~」
○三宅島2000年噴火
火山ガスで植生被害 土砂災害発生、対策工事
2時期の航空レーザー計測による微地形の変化をGIS上で認識
砂防ダムができた、滝が後退した、道路がなくなった等、色んな事が読み取れる
○北海道サロベツ湿原
牧草地の微地形の可視化に成功
人間の目には分かりにくい微妙な凹凸も表現
○国土地理院数値地図50m
航空レーザー計測以外にも応用可能
○鳥瞰図にも 新しい地形認識手段
フルカラー画像は拡大/縮小に強い
○航空レーザー計測+ナローマルチビーム音響測深
写真に撮影できないデータを可視化(ダム湖等)
○ブラタモリ 鎌倉の赤色立体地図
国土地理院の5mメッシュ地形データを使用して作成
5. 「色相とは ~赤い色の理由~」
「赤・緑・青の3色が一番見やすく、その中で1番赤が人は見わけやすいです。」
3色使えない訳ではないので、ニセコのスキー場では青色立体地図を試みました。
6. 「脳内画像 ~様々なスケールのデータに適応可能」
溶岩表面の微地形[1/5000](1mメッシュ)~
プレート[世界地図](4000mメッシュ)まで表現が可能です。
○等高線による地形表現の終焉
・DEMデータの利用には、赤色立体地図が有効
・赤色立体地図は、1枚の地形図と重なる疑似カラー画像で、
特別な装置なしに、どの方向からも裸眼で立体的に見える
・等高線の苦手な人、老眼・色覚障碍者にもわかりやすい
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赤色立体地図は、千葉様がお話して下さった様に、誰にでも分かり易く、
様々なデータに利用可能だという事が分かりました。
弊社の測量資料にも活用していき、お客様に分かり安い資料作成を提供いていきたいです。
千葉様、ありがとうございました。
アジア航測㈱
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