未来土木⑤

[2017.02.27]

2.07、「未来土木~人と自然とやりがいの共存を目指して~」、
本日は、(公財)北九州産業学術推進機構 専務理事:松岡 俊和 様による、
『サステイナブルな地域づくり』と題したお話について、ご紹介をさせていただきます。

これまで環境分野に携わり、北九州で環境を取り戻すため、強い意志を持って
進まれてきた松岡様より、環境の視点からお話をいただきたく、
今回、松岡様にご講演をお願いさせていただきました。

松岡様① 松岡様②

≪松岡様より≫
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私は、これまでずっと環境分野に携わってきました。
田端様より土木に対するイメージのお話がありましたが、
私が土木に抱く印象は、「土木はかわいそう」というものです。

それは、国土交通省出身で、これまで国土づくりに携わってきた人が、
「道路が整備されると、市民の方々にとってはその整備された状態が
当たり前になる。」そう言っていた言葉が、耳に残っているからです。

また、最近は集中豪雨による河川氾濫がしばしば生じますが、
河川改修を行っていなければ河川が氾濫して甚大な被害が生じただろうことに関し、
担当者が、「そのことを褒められたりすることはない。当たり前のことだ。」
そう言っていた言葉もまた、私の中に残っています。

みんなの当たり前の日常を支え、縁の下の力持ちとなっている土木。
一方で、これまで私が携わってきた環境は、とても脚光を浴びています。

その反動もあるのか、市役所の中でも、
土木の人たちは、「支えているのは土木」と、
やたらと群れる傾向にある気がします。
正直なところ、土木のイメージがあまりよいとはいえません。

今、私は土木の悪口を言いましたが、環境分野も同じです。
私は、「北限のサル」という逸話を持っています。
環境庁に出向していた際、アセスメント業務を担当していました。
様々な開発事業があり、これらの事業に対して各局の意見交換を行っていた際、
「青森県の開発はダメだ。そこはサルが生息する北限だから。」
そう言われたことがありました。

その話に、私も当初納得していましたが、よくよく考えると、
そこがどういった意味を持ち、どういった場所なのかということを理解
した上での反対ならよいのですが、「北限のサルだから。」、
その固定概念で開発できないというのは、おかしいと思い至るようになりました。

この「北限のサル」の話は、土木と環境との間のいびつな図式を
生み出してきたものと同じだと、私は思っています。
お互いがお互いをしっかりと理解し、融合した上で社会をつくっていく。
今、それが必要なのではないでしょうか。
その点、環境は、土木に比べその切り替えが、一歩先に進んでいると感じています。

北九州は、公害問題を克服してきましたが、
問題は解決したと、そこで終わりにするのではなく、
今、同様の問題で困っているアジアの国々に、解決のための技術や人材、
ノウハウを伝えていこうと、世界に打って出ているところです。

北九州は、「北九州エコタウン事業」という、日本最大のエコタウン事業を
行っています。これは、ごみ産業を本当の産業にしていこうと取り組んで
きた事業であり、今、世界最先端の取り組みとして、
多くの方々が見学に来てくださっています。

今こそ、「エコタウン事業」や「循環型社会」と言われていますが、
この事業に取り組み始めた時に私が言われていたのが、「売国奴」という言葉です。
「北九州にごみを集めて、北九州をごみの町にするのか。」そう言われ続けました。
この事業は、現在も、まだ道半ばではありますが、
循環型社会の一歩を踏み出すチャレンジをしているところです。

環境の自慢をしてきましたが、
翻ってみると、北九州が工業地帯となり栄えてきた歴史には、
土木による埋め立てと、埋め立て地の上に工場の建設、そして、
水源の確保。こういった、バックグラウンドがあります。

私の転機となったのが、北九州市の「環境モデル都市」認定です。
北九州市は、産業基盤を活かした低炭素社会、そして、高齢者や
子どもたちが住みやすい少子高齢化に対応した社会として、
認定をされました。

私は、これまで、環境に携わってきた1人として、自負心がありました。
そのため、この時、「環境モデル都市」の青写真を描こうとした際に、
それを描くことができない自分自身に、大きくショックを受けました。
1つ1つの対策は描けても、まちとして、地域として、どういった社会を
つくっていきたいのか、全体的な俯瞰デザインを描くことができませんでした。

では、なぜ北九州市が「環境モデル都市」に選ばれたのか。
それは、この時に土木に携わる人、建築に携わる人、様々な分野の方々で、
「環境のまちづくりとはどういうことなのか。」ということを議論し、
それを基に絵を描いていったからです。
環境の人間だけでは、この事業はできませんでした。

北九州が「環境モデル都市」として目指すまちの姿の1つ、
みんなが暮らしやすい、利便性を確保したまちづくり、
「コンパクト・シティ」の創出は、まさに土木の世界だと思います。
どういう風にまちづくりの中に、暮らしやすさや利便性といったものを
織り込んでいくのか、これは環境の専門家ができる部分ではなく、
土木のベースがあるからこそできることです。

また、低炭素技術や方策を総合的に取り入れて、ゼロ・カーボンを
目指した住宅街区の創出には、エネルギー、公共交通、タウンマネジメント、
エコ住宅等、様々な要素があります。
土木の世界、そして、環境の世界といった縦割りの世界ではなく、
知恵を出し合い、考えを共有しながらやっていかないといけない。
その重要性を改めて考えさせられます。

まだまだ、北九州の中にも、土木優先、そして、環境優先といった
色合いが残っているのも事実です。
しかし、縄張りなどない、ボーダレスの時代です。
社会が最適になるように、それぞれの分野が力を合わせていくことこそが、
発展していくための流れなのではないでしょうか。

土木も環境もひとりよがりにならず、
様々な分野の中に、ボーダレスにどんどんと入り込んでいく。

土木には、まだまだ伸びしろがたくさんあると思います。
今、まさに土木の出番です。
狭い世界に閉じこもらず、土木には、社会をつくるメインプレーヤーとして、
環境と一緒に進んでいけたらと思っています。

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青い空・青い海を取り戻してきた北九州の歩みは、
土木が自然のしくみを取り戻していく歩みに向けた大きなヒントとなるとともに、
松岡様のストレートなお話は、土木と環境とが手を取り合って、
新たな一歩を踏み出す、その重要性を改めて感じたお話だったと思います。

松岡様、ありがとうございました。

(公財)北九州産業学術推進機構

★4月より、北九州産業学術推進機構に北九州研究開発事務所開設します★

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