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9.20 第二回九州未来土木 in博多 講演レポート②

[2018.12.19]

講演Ⅱ「土木エンジニアの哲学 ―海外プロジェクトを通じて―」
今石 尚様 大成建設㈱ 土木本部 / 一般社団法人日本建設業連合会 部会⾧
9.20今石様



1957年 福岡市生まれ、1981年 九州大学工学部土木工学科卒業・大成建設㈱入社、1981年 広島支店配属(支店設計室、高速道路、原子力発電所工事等に従事)、1987年 東京支店配属(東京湾アクアライン、神田川地下調節池他シールド工事等に従事)、2005年 国際支店配属(ボスポラス海峡横断鉄道トンネル工事に従事)、2010年 技術センター配属(土木技術開発責任者)、2018年 本社技師長。
 入社以来、30年間作業所勤務、内24年間シールド工事担当、内12年間国内外で作業所長を歴任。2010年に帰国後、技術開発とシールド技術を担当しながら、大学講師を含め90回を超える講演や学会活動を通して、インフラ整備の重要さとものづくりの喜びを伝えている。建設を通して得られた地元の方々の笑顔が宝物。趣味は、絵画とワイン。海外駐在中6年間で100枚を超える水彩画を素描、2006年より収集したワインのラベルは1,000枚に届く勢い。
 今回は、地元九州に貢献できればという思いから馳せ参じた。


1.経歴について
まずは、私の経歴を説明させていただきます。1981年に入社し30年間の作業所勤務のうち24年間シールド工事を担当しました。主なもので1つは東京湾アクアライン、2つ目は神田川環状七号線地下調節池、3つ目はボスポラス海峡横断鉄道を担当しました。その後7年生産技術開発を担当し、この1年は本部付き技術⾧です。

2.技術の話
自動化の分野で、Ti-ROBO Rebar(自律型鉄筋結束ロボット)を開発しました。ホッチキスメーカーのマックス社から結束技術を、千葉工大からベースマシンを導入し、自社開発のプログラムで統合させて完成しました。またコンクリート床仕上げロボットを開発し、人のスピードの3倍でならす作業を自律化させました。

3.海外プロジェクトを通じて大成建設の哲学の話
トルコのボスポラス海峡横断鉄道プロジェクトでは、当初つり橋をかける案が検討されましたが、景観上の理由で廃案。次に安全で早いということでシールド工法が検討されましたが、海峡両端の駅が深くなるため廃案。最終的に海峡部のみ海底面ぎりぎりに設置できる沈埋函工法が採用されました。海峡部以外のトンネル部は、直径8mのシールド工法が採用されました。トンネル内には、車イスでも通れる幅の避難通路になるプラットホームがあります。上り線と下り線が別のトンネルになっているので、非常時に安全なトンネルへ避難できるようになっています。
今回のプロジェクトでは、2つの世界初となる技術が実施されました。1つ目は、コンクリートカルバートボックスを海に浮かせて船で運び沈める沈埋函の設置深さが今までで類を見ない深度60mであること。2つ目は、シールドの丸いトンネルのシールドトンネルと四角いトンネルの沈埋函トンネルを、通常では立坑を介して接合するのですが、今回は地中で直接接合しました。
未だに、沈埋函の設置深さは世界一です。

4.歴史遺産との調和(埋蔵文化財の発掘調査)
イスタンブールのアジア側ユスキュダル駅の掘削作業では教会跡と墓が発掘されました。ヨーロッパ側のイエニカプ駅の掘削作業では港跡と沈没船が発掘されました。
この発掘により、当時のトルコ最大の輸出品目はワインで、交易相手の北アメリカのアレクサンドリアから小麦を輸入していたことがわかりました。また、ヨーロッパ側のシルケジ駅の換気塔掘削作業では、まずオスマン時代の住居跡が発掘され、次いでビザンティン時代の建物跡、古代ローマ時代の遺物、8,000年前の人骨までもが発掘されました。
このように埋蔵文化時調査で遺物が発掘されることは、考古学上大変重要な物証となるため、工事よりも優先されるのが常です。
ただし、文化財が発掘されると調査団は、手掘り→3D測量→報告レポート作成→考古学の歴史博物委員会へレポートを提出という流れになり、その後委員会で、撤去or別の場所へ運んでさらに調査orそのまま残すという3通りの判断が下されます。この一連のサイクルには、遺物ごとに3か月から半年を要してしまいます。トルコではこれまで今回施工のように地中深くまで掘ることがほとんどなかった為、掘れば掘るほど古いものが出土し、そのたびに工事が止まり思うように進みませんでした。当初5年の工事予定でしたが、発掘調査で7年を費やし最終工期は9年になりました。
トルコには相続税がないため、家屋は親から子、子から孫へと引き継がれていきます。そのためにトンネル掘削予定路線上には築100年以上の古い家屋が多く存在します。これらの家屋を工事の影響から保全しなければならいないため、路線上の家屋を調査し、補強したり建て替えたりする必要がありました。
このように埋蔵文化財調査や老朽建物の保全などを通じ、トルコ文化と国民性を理解し尊重しながら工事を進める必要があったわけです。

5.土木とは
人々が暮らし、様々な活動を行うような条件や自然環境、人間環境を整えることを通じて、私たちの社会を飢餓と貧困に苦しむことなく、安心して暮らせる社会へと改善していく総合的な営みと考えます。

6.倫理
土木は、国家の経済、地理、歴史をも変えることが出来る裏付けになっており、もっと謙虚になって物事を進めなさいという事で、わが社のキャッチコピーに「地図に残る仕事」という言葉を使わせてもらっています。
人類の福利とその持続的発展は政治の役割と思いますが、我々は、土木の技術で貢献していこうと考えています。
そして、そこに求められる資質は、敏速、安定性、情熱が必要と部下に常々話しています。
私たち大手建設会社は、世界の人たちに笑顔を届けたいと思います。
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今石さんの話を伺い、私たち日本人は、政治だけではなく土木の分野でも世界貢献をしていることを知りました。単なる技術の押し付けではなく、その国の特性を理解し尊重して受け入れてもらえるような工事であるから、世界貢献になるのだと理解しました。そのことで、同じ日本人として誇らしく思いました。

今石様、ありがとうございました。

大成建設㈱

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